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【 城 と 私 】
 東海道、山陽新幹線に乗ると、右に左に石垣や天守閣のある城が見える。私の故郷、信州松本にも五層の武骨なたたずまいの天守閣が、北アルプス連山を背景にして建っている。子供の頃は冬に全面氷結したお堀で、下駄スケートなるものを履いて遊んだ思い出がある。その頃はお城に対して気にしていなかったが、故郷を離れて40年の間に、一種の郷愁であろうか、あるいは400年もの昔にあの巨大な石垣や大木造建築物を築いた先人達への畏敬の念からであろうか、旅の折など時間を工面して、その地方の古城を訪れることを楽しみにしている。

 それにしても大坂城や熊本城や丸亀城などに見られる高さ30mにも達する(9階ビルに相当)扇の勾配と言われる美しい曲線を画いた石垣が、延々と折り重なって連なっている景観は、その雄大さ、精巧さ、構成の美しさなど圧巻であり神秘的な感を与えてくれる。

 大坂城の石垣は本丸で約1200m、二の丸で2500mもあり、およそ100万個の白い花岡岩の切石が用いられているという。熊本城の石垣は黒い安山岩の切石であり、この面城の石垣の美しさは格別である。また、世界遺産(文化)に指定されている姫路城(白亜の総塗籠、別名白鷺城)に登ってみると、およそ90cm角の2本の大黒柱と40cm角の柱が林立し、天井も巨大な梁が井桁状に架けられていてその壮大さに驚きを隠せない。この天守閣の高さは31mで5層7階であり、その重量は5700トンもあると言う。今は無いが江戸城や大坂城の天守閣は44mもあり、土台の石垣からの高さは58mに達し、今様で言えば18階ビルが摩天楼の様に聳え立っていたことになる。

 第二次大戦で焼失した名古屋城の天守閣は、床面積が姫路城の2倍もあり、最も大きい天守閣であった。その重量は1万トンに近かったのであろう。これらの巨大な建築物は石垣の土台の上に建てられている。この石垣は表面30〜90cm位の自然石や切石が積み重ねられていて日本独自の技術である。例えば、表面60cmの石はその奥行が2〜2.5倍もあり、その奥に子供の頭位の栗石が石の奥行きの2倍の厚さでぎっしりと詰め込まれている。更に砂利層のある三階構造となっている。また、海外の城壁では見られない曲線構造は、巨大な自重と天守閣の重さを巧みに分散しているのだと言う。

 私は長年、塗料や表面処理の仕事に携わっているが、城を見ると塗膜の土台となる被塗物の表面調整や塗装システムの大切さが脳裏をかすめるのである。

<三代沢 良明>




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